勇気をくれた君に照れてる場合じゃないから 第一話

お父さんお母さんが子どもの声をいつも100%傾聴するのは難しいこと。

せめてサッカーの時間だけは耳を傾けてあげたいと思っています。

 

Dは小さい頃から「見てろよ」が口癖だった。

 

リフティング練習でもキックの練習でも1対1でも決まって口にする。

そして時折まるで魔法のようなプレーを見せてくれる。

 

だからDが「見てろよ」と言った時は少し楽しみだったりする。

周りも真似をして見るのが大変になってしまうことも多いけど。

 

彼の独特なボールタッチは見る人が見ると異質に感じる。

ボールが入るとその空間だけ揺るやかな時間が流れるような錯覚を覚えるから。

 

プレスが来ても囲まれても間合いを変えることでいなすことが出来る。

それは教えたわけではなく、元々小さい頃から出来たプレーだった。

「上手いなぁ!」ってただただ褒めるしかない選手だった。

 

そして通りそうで通らないパスを出せる所も魅力で、どんなに混戦でも決定的なパスが出せた。

 

また、同期には、後にJクラブへ行くパワーと知性を兼ね備えたEがいた。

彼が剛の選手とすれば、Dは柔の選手。

Dが敵を集中させて、散らしてEが得点するパターンが王道だった。

 

人数掛けて来なければ自分でも切り込めるため、相手からすると人数かけて潰したいけどハイリスクを考えなきゃならない怖さのある選手だと思う。

 

接戦においてはDEが噛み合ったかどうかがチームの勝敗を分けることも多々あった。

しかし、3年生の冬に起きた出来事によって状況が一変した。

 

「緊急搬送されました。左足大腿骨を骨折しています」

 

つづく

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