
最後の大会にもなると熱い試合が続き応援にも熱が入る。
けど、熱いプレーとケガはもはや表裏一体だと思う。
・・・キープレイヤーの一人が負傷してしまった。
イエローカード提示のラフプレーだった。
前半早々に要を失ったことで試合前のプランは完全に狂った。
選手たちも不安そうな顔でこっちを見てくる。
「誰を入れて勝つために何をどうすべきか」
小さな判断の積み重ねで試合は決まる。
奇遇にもそのポジションは彼が得意とするポジションだった。
6年生にとって最後の大会、
最後はなんとしても有終の美を飾りたい。
でも、想いだけではやれないので、ある程度の狙いと勝算は持たなきゃならない。
応援する親たちは「どうするんだろう。。。」なんて顔でベンチを見ている。
とても深く、次の展開を見据えて考えた。
「○○、行こうか」
正直、今の状況に一番フィットするであろう5年の選手と悩んだ末の決断だった。
彼の荒削りながらも突っ込んでいくバイタリティーに賭けた。
彼は準備して交代ゾーンに向かおうとする。
「頼んだよ」って一声掛けた。
しかしなぜか交代ゾーンに向かう途中で引き返してきた。
ちょっと意味が分からない。
ちょっと半泣き。
ますます意味が分からない。
「コーチ、おれの代わりに○○を出してください」
突然の申し出。
「・・・それは出たくないってこと?」
「いや、おれは出るべきじゃないと思う」
「わかった」
時間も無いのですぐに指名したそいつを交代ゾーンに送り込んだ。
・・・例の5年生ね。
交代も終わりベンチに腰かけようとしたとき、彼に訊ねてみた。
すると、
「ここは譲るべきだったでしょ」
という言葉を言い終わるかどうかで忍び泣き。。。
伝え方で意図と決意が伝わってきた。
そういうことなら、そういうことなんだろう。
意味がわかってとりあえず、もらい泣きしてしまった。
「その決断、素直に凄いと思ったよ」
ただひたすら横で泣いているのでほぼ独り言のように伝えた。
「譲るべき時と譲ってはいけない時がある、後で詳しく話すけど、今はそれだけを覚えておいて」
と伝えて、また試合に意識を戻した。