
「お世話になりました。移籍します」
しばらくして、簡素な連絡がやってきた。
どうしてこうなった。どうしてこうなった。
「口ではああ言ってもプレー見たら考えを変えてそのうち出場させたくなるだろう…」
そんな思考が巡ったのではないかなと思う。
事実、30以上の幼稚園を持つ強豪クラブチームの中でもその才能は光り輝いたそうで、
瞬く間に傑出した存在感を見せたと聞いている。
それから1年が過ぎて、、、
2年が過ぎて、、、
彼は6年生になった。
結論、現実はそんなに甘くなかった。
その移籍先のクラブは義理と人情に熱いクラブだった。
約束通り、彼は公式戦に一切出場していなかった。
練習試合ではスタメン、なぜか公式戦にはいない。
敵チームからはさぞ不思議な存在だっただろうに。
彼はその後、ジュニアユースに上がり、実に三年振りに公式戦出場を経験する。。。
そんな時、1つの知らせが届いた。
「おい、あの三兄弟の末っ子が幼稚園のサッカーに顔を出し始めたぞ、、、しかも左利きだ」
計算からすると、、、そうか、3年の移籍の時だ。
「あの時、すべての布石は打ってあったのか?」
と思ってしまった。
長男次男が右利きに対して、末っ子は左利きで足も一番早い。
「そいつは生まれた時から上手かったらしいぞ」
「ホントかよ?」
見た。マジだった。震えた。
さらに驚いたのは、そいつと対等に張り合うライバルがいたという事だ。
学年男女合計40人にも満たない小さな幼稚園で、、、どういうことだ?
しかも誕生日まで同じ。
いつしかAは〇〇家の最終兵器と呼ばれるようになった。