勇気をくれた君に照れてる場合じゃないから 第二話

「緊急搬送されました。左足大腿骨を骨折しています」

その第一報を聞いた時、僕は授業中だった。

授業に集中していたからか、聞いた瞬間は事の重大さに気づけなかった。

 

授業が終わり、改めて意識を戻した時、、、身体が震えた。

「大腿骨・・・?大腿骨ってどこだ?大腿骨はここだ、、、ここか!マジかよ!!」

もうその瞬間に身体中の力が抜けた。

 

どうやら学校で雪合戦をしていて溝に足を引っ掛けてしまったそうだ。

一昔前どころか、どう考えても選手生命に差し障るケガだった。

そして3年生の冬、これは実際にサッカーをやっていたらわかると思うけど、セレクション真っ只中である。

 

後日、学校を休んでお見舞いに行った。

元気そうな顔をしていたのが唯一の救いだったことを覚えてる。

少なく見積もっても全治8ヶ月、一番伸びる時期にこのケガは酷い。

 

冬が過ぎて4年生になった。

 

公式戦も続々と始まり、チームメイトもDが復帰する日のために勝ち続けようと一致団結していた。

Dのことを忘れたとは言わないけど、それぐらい目の前のことに集中していた。

 

夏も過ぎた。

 

チームのみんなも良い意味でDことを忘れて、自分のレベルを上げるために奮起していた。

でも、EだけはずっとDのことを聞いてきた。

 

「ねぇ、Dはまだかなあ・・・」って。

もう、その言葉を聞くたびに哀愁を感じてすごく淋しい気持ちになった。

その言葉を聞いただけでも、どれだけ信頼を寄せていたかがわかった。

 

だから、E達がどれだけ心待ちにしているかって話をDに何回も何回も伝えた。

その話を聞くと、Dは決まって嬉しそうに笑った。

 

手術を終えて、大腿骨にはボルトが入り、足は思うように動かなくなった。

両方の足で太さが変わり、折れた足は痩せてしまった。

 

リハビリをする度に足が自分の思うように動かないことを実感する。

小学生が経験するにはハード過ぎる体験だと思う。

見せないだけ言わないだけで、知らないところではさぞ泣いただろうに。

 

本人がどんな気持ちでいるかは正直想像もつかない。

でも、少なからず勇気を伝える続けることは出来たのかなと思った。

 

秋が過ぎようとしていた。

 

その日、練習開始前からみんなニコニコしていた。

もうどれだけ待ったか分からない。

 

スパイクを履いてフィールドに現れた時、もうみんな宴のごとくハイテンションだった。

 

わざとDにパスを出して、トラップしてもらって、無言の返球をもらう。

会話が上手くないEの最大限のコミュニケーションを側で見ていた。

 

Dも何か話しかければいいのに、Eには何も言わない。

本当に、ただただ無言でハニカミながらパスを交換している。

もしその場を写真に納めたのなら、何の変哲もない写真に写るでしょう。

 

でも、凍りついた時間がゆっくりと溶けて流れるような不思議な感覚が伝わってくるはず。

 

邂逅という言葉がよく似合う、その光景は一生忘れられないと思う。

スゲー嬉しかった!!

おわり

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